ハムニテ王国

ハムニテ王国広報担当の穴澤輝樹と申します。先生、俺死にたいんすよ。

ほろ苦い思い出

人の不幸は蜜の味とはよく言う。確かにそうだ。人の不幸を喜んでいる時点でその人は「勝者」である。いつだって苦汁を舐めるのは敗者だ。敗北のビターテイスト。俺も人生は敗北の連続。負け続け負け癖まで付いている。だがそんなほろ苦い思い出の数々も笑ってくれる奴がいるならそれでいいんだ。俺の負けがお前の蜜になるなら、今日も聞いてはくれないだろうか、ほろ苦い思い出を。

俺は13年前、裸族に服を着せるボランティアを独自に行っていた。何故か俺の住むこの田舎では服を着たがらない輩が後を絶たないんだ。やはり人の裸はおもむろに出していいものじゃない。生物学的にも良くないはずだ。裸族に服を着せるのは簡単なことではない。何故なら相手は服を着たくないから裸族なんだ。当然俺も平和を愛する1つの命だ。裸族に対話を試みる。

「服を着た方がいい。紫外線が直に全身にかかりいずれは食べたでんぷんに支配されてこの大地の礎になってしまうぞ?」と適当にホラを吹いた。

すると全裸の中年男性は「ポタク存じ無し?肛門を日光に当てる事で人は光合成を行い体内で数多のミネラルを生み出す。渦巻き状の無限ミネラルを身体の核へ押し付けることで命の輝きはまた1つ上層階級へ上るのです。これは自然淘汰に抗う為生命としての義務に近い行為なのれすw」

な、何を言っているんだこの裸ハゲ髭もみあげマンは!?どのレベルの話をしている…?俺が中卒なのがここで仇となったか…しかたない。あまり気は乗らないが強硬手段だ。裸族は無理やり服を着せるとガッカリして帰宅する習性がある。…参る!

悪戦苦闘の末俺は裸族に服を着せた。裸族は家に帰った。しかしこれで終わりではない。この田舎は裸族で溢れかえっている。次の裸族を…着せる。

裸族を追い走ってると俺は足を滑らし田んぼへ落ちてしまった。何だこの田んぼ、深い!底なし沼みたいだ…俺はここで死ぬのか。その時俺の目の前に田んぼの女神が現れた。

「落し物だーーーーーーーー!」

まさかこいつ!童話でよく見る拾った物を金と銀にトレパクする異常女!!しかも田んぼでグレードダウンしてるからか全裸だ!?

服を着せなきゃ!!!!!!!!!!!!!!!!

しかしここは田女神のテリトリー。俺は動けずなす術なくトレパクを見守るだけだった。

そうして田女神は田んぼの外へ出て恒例の落し物2択を開催した。相手は……さっき服を着せた中年男性!?帰り道にこの田んぼが位置してたのか!頼む、助けてくれ!

「いいえ。普通の裸の中年男性です。」と中年男性は言った。自己紹介!?いや…違う。俺も、全裸中年男性なんだ…

全裸中年男性は金の俺と銀の俺を左右に展開してサカナクションのバッハの旋律を夜に聴いていたせいですごっこをしながら去っていった…

そうだ…俺は裸族、同族嫌悪で裸族に服を着せる一族の裏切り者なんだ…そんな俺が田んぼに沈み、なんかリッチな色した俺が世に出ていく…俺はオリジナルなのに偽物の後ろ姿を眺めながら田んぼの奥底へ沈んでいく。死を覚悟したその時、田女神が発狂し始めた。

「やってはいけないドレミの歌!wド〜はどんぐり飲〜み込む〜!レ〜はレクサス傷つける〜!ミ〜はmixi今始めるっ!ファ〜はファスナーで身ぃ挟むっ!ソ〜はソボロを撒き散らす〜!」

こいつ!!!正気か!?次々と極刑レベルのやってはいけないことをこなしていく!!!まさかラのパートは!?やめろ!そんなことしたら!!!!

「ラ〜は裸族に服着せるっ!」

やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

こうして俺は還った。生命のあるべき所へ。

そんな悪行をしてた俺も今では立派な公務員。そう言えば、シのパートってなんだったかな。あ、思い出した!「シ〜は鹿を蹴るぅ〜!」

俺はそう言って元気よく鹿を蹴ってしまい今拘置所にいるって訳。こんなほろ苦い話を聞いてくれてありがとうな。断固無罪を主張します、また法廷で会いましょう。